書誌情報

著者:佐川英治 杉山清彦 小野寺史郎
言語:日本語
発行年:2020年3月
出版社:放送大学教育振興会
選書コメント
古代・中世・近代それぞれの中国史研究者が集まって執筆した大学生向けの教科書。タイトルの通り、中国史として独立して語るのではなく、中国大陸を含む地域全体を俯瞰しての叙述を目的としている。また「東アジア」ではなく、「東部ユーラシア」という名称を用いて、「東アジア」という呼称と意図的に距離を取っている。「東部ユーラシア」という名称自体は、中国古代史の中で近年用いられるの事のあるもので、中国大陸よりも広域な視点、例えば、その海域や島嶼、半島、列島、近隣の大陸なども含んでのユーラシア大陸東部地域を指している。とはいえ本書は、そうした東部ユーラシア地域のなかにある中国史を記そうとするのではなく、地域としての「東部ユーラシア」と「中国と区分される歴史」とを明確に切り分けている。
近代科学の一端として始まった歴史学の目的意識は、近代国民国家の形成への道筋を叙述することに置かれたが、前近代の出来事そのものは今日の社会に必ずしも帰着するものではない。ゆえに、過去に生じた諸々のことを、地域によって区分し時系列という縦のラインに編成することは、帰着点の方をまず意識してそこに連なるような叙述を為すという作業になりがちである。これ自体は批判されるべきものではないが、少なくとも注意を払うべき点には違いない。
現在我々の学ぶ日本史だとかドイツ史だとかの「○○史」と呼称される諸国家の地域史は、一般に近代歴史学の上に成立しているものであるがため、上記のような思考の枠組みを前提にしている、ないし前提にせざるを得なくなっている。そのためメタ的視座をもって歴史叙述を解体することもしばしば必要とされる。
その好例たる本書は、その主たる対象に中国を見据えつつも、グローバルに社会の多様な発展性を認める立場を取ろうとしており、今日の地域社会を考える上で重要な視座を提供してくれる。


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